1994年頃、東京は葛飾区の古道具屋で買った謎の電子オルガン「リズムトーン」。
電池を入れて弾いてみると、単音でしか鳴らない上にヘロヘロな音。
木製の立派な外観に比べ、中の構造や回路は比較的シンプルな作り。
それでもチープな音が大好きだった自分にとっては最高にお得な買い物でした。
弾いているうちに怪しいフレーズが生まれ、勢いで録音したのがこのトラックです。
3年後、とある漫画家さんの個展のBGMを頼まれ、
その中の一曲として、リズムトーンがきれいな曲をブチ壊すというアイデアが浮かんで録音しました。
更に時間が経って接触不良が悪化してより過激になりました。
リズムトーンには、”Rhythmtone”という商品名以外、何も記載がなかったため本当に謎のキーボードでした。
上記2曲をYouTubeで公開してみたところ、見た目の愛らしさと反比例する音の魅力に予想以上の大変な反響がありました。
面白かったのは、第一線で活躍するミュージシャン、現代音楽関係で活躍する作曲家・演奏家、その他かなりの音楽通の方々から反応があったことです。もしあなたがリズムトーンの音に魅力を感じるとすれば、非常に高い音楽性、もしくは感性があることは間違いないでしょう。
あと意外な情報としては、リズムトーンの音に犬や猫が驚いてキョロキョロしたり物陰に隠れたりと反応することでした。
この反響から改めてリズムトーンについて調べてみました。
ネットで明らかにヒットしたのはたった1つ、ある方のツイートだけでした。
それは松阪崇久さんのツイートで、そこには、大阪・新世界の通天閣の北にある古いおもちゃさんで撮影した箱に入ったリズムトーンの写真が。おかげさまでイノウエというメーカーであることが判明しました。
ご本人に許可を得て、写真をここに転載します。
更にツイッターで、ま⊃つさんが同じ場所で撮影したと思われる写真をアップされていました。こちらもご本人に許可を得て転載します。
電子古楽器の研究仲間の藤野純也さんもリズムトーンに大変関心を持ち、いろいろと調べてくれました。
> 調べてみると名古屋に井上楽器製作所というトイピアノの製造で知られたメーカーがあったようです。もしかしたらリズムトーンのイノウエは トイピアノのイノウエ楽器製作所でしょうか。
> 井上楽器製作所は木の加工技術で特許もとっているようで、リズムトーンのイノウエとトイピアノのイノウエが同じ会社だとしたら、リズムトーンの筐体が美しいのにも納得ができます。
との情報が。そのことをツイッターに書いてみると、
ペンネーム:アベケージさんから、イノウエ製のトイピアノを所有していて、その箱にあるイノウエのロゴとリズムトーンの箱の写真にあるロゴが同じとの報告を頂きました。
これでリズムトーンは、トイピアノで有名な、優れた木工技術を持ちながらも残念ながら1999年年3月に倒産した名古屋の「イノウエ(井上楽器製作所)」の電子オルガンであることが判明しました。
http://hwm7.gyao.ne.jp/hasu/piano.htm
イノウエ製のトイピアノの情報もいろいろと入ってきて、実に音も見た目も愛らしく素晴らしい製品を作っていたことがわかりました。
これだけ多くの人にインパクトを与えるならば、リズムトーンの音を自作の楽器たちで再現したい!
私のヨネミンの音をマイルドにしてビブラートをかければ似るのではと実験したのが下記のツイートです。
鍵盤の接触不良の不安定さはないですが、なかなか似ているのではないでしょうか。これで不安定なキーボードを作れば完璧でしょう。
圧倒的にリズムトーンの存在が大きいと思ってましたが、こうして別の楽器で再現してみると、メロディーもそれなりにヤバかったことがよくわかりました。
もう一台、リズムトーンを手に入れようかと迷いましたが、灯台下暗し、幸せの青い鳥は私の家にいました。