私が小学校いっぱいまで住んでいた町にはいくつかの駄菓子屋と模型店があり、アオシマのプラモデルは本当によく組み立てて遊んだ。今でも旅先で古いおもちゃ屋を見つけると、アオシマのプラモデルがないか?と探してしまうぐらい、私にとってのキング・オブ・魂(ソウル)玩具だ。
1970年代から80年代中頃まで、アオシマこと青島文化教材社という模型メーカーからは、初心者向け、低価格(100円~)、しかも遊び心いっぱいのプラモデルが数多く発売された。本物を出来る限り忠実にミニチュア化する王道からすれば、やや一段低く見られることもあったがプラモデル工作ビギナーに完成させる喜びを与えた功績は計り知れない。
アウトサイダー・プラモデル・アート 青島文化教材社の異常な想像力文/有田シュン 写真&所蔵/吉野正裕・太田幸彦
「アウトサイダー・プラモデル・アート-アオシマ文化教材社の異常な想像力-」が出版された。
同じような書籍としては、はぬまあん氏の「超絶プラモ道」と続編の「アオシマプラモの世界」があり、非ガンダム系や摩訶不思議なプラモを愛情いっぱいにツッコミながら紹介、資料本としても充実していた労作だった。
今回の「アウトサイダー…」も大まかなフォーマットは「超絶プラモ道」と同じだが、アオシマの合体・ミニ合体シリーズに絞り、版のサイズも大きくして実物の写真をより多く載せ、ジオラマ妄想ストーリーと称してザリガニワークスのコレジャナイロボとの共演など遊び心いっぱいのページ、たくさんの資料やインタビュー、なぜ合体シリーズの発売が終わったのかの検証など、ワクワクのコンテンツでいっぱいだ。素晴らしい!!拍手!!
とにかく実際に手にとって頂きたいが、一番印象に残っているのは当時開発していた青嶋正夫氏と堀井康吉氏のインタビュー。「アオシマには、基本的に初心者の入り口をちゃんと作っておくという思想があるんです」、「他にこれ以上面白い仕事はありませんでした。その中でも合体プラモデルは一番面白い仕事でした」など読んでいて目頭が熱くなったぜ。
私もPCとマイコンボードがあればスタイリッシュな電子工作が楽しめるこの御時世だからこそ、シンプルでプリミティブな技術を楽しむシーンがあってもいいのではと、非PC系の電子音楽を続けている。特に音楽では楽器の構造が複雑になればなるほど、その人の個性を表現したり、より豊かな音楽を表現することが逆に難しくなることを現場の経験と歴史から学んでいるし。
話を合体に戻そう。合体プラモデルの最大の特徴は接着剤なしのはめ込みオンリーで組み立てるところ。その点が何よりビギナーにもトライしやすかったわけだが、接着剤なしということは… 分解も簡単に出来るということだ!なんと合体シリーズはジョイント部分の穴の直径が5mmに統一されている。勘の良い方はお気付きだと思うが、他のシリーズの部品を組み合わせたり、ロボットの場合だと手と足を入れ替えて組み立てたり(笑)、かなり悪趣味…いやいやアバンギャル度の高い造形が楽しめたのだ。そう!統一された規格による互換性というものをここから学んだのである。モジュラーシンセも統一された端子間をケーブルで接続することで音作りを楽しむ、まさに合体そのものなのだ。
私の創作活動の根底にアオシマ有りはご理解頂けたと思う。というわけで、実際にアオシマへのオマージュを意識して作った機器を紹介しよう。
「おやこマシン」というシリーズがあった。マシン、ミニマシン、ミニミニマシンがセットになったプラモデルで、ミニミニマシンはマシンに格納できる。上の写真は私が一番お気に入りの「イーグルヤマト」の箱。
で、組み立てた様子(笑)。戦闘機のF-15イーグルと戦艦ヤマトの組み合わせという、これまたツッコミどころ満載の造形はさておき、この3台の大きさの関係性が大好きで何か自作楽器でも同じようなことが出来ないかと漠然と考えいた。
演奏のメインで使っている「1号機」が完成したとき、心臓部のチップの廉価版を入手したので半分くらいのサイズの「ミニ1号機」も作った。しばらくしておやこマシンのことも思い出して、「ミニミニ1号機」のアイデアを思いついた。
さすがに1号機にミニミニ1号機を格納は無理だったけど、3台それぞれが機能を助け合ってつなげて音作りを楽しむことも出来る。ライブのとき3台を並べて演奏しているとおやこマシンのことを思い出してちょっと幸せな気分になる(笑)。
1号機とミニ1号機はギター用の、ミニミニ1号機は携帯電話のストラップがつけられるようになっていて、3台ともショルダー出来るようになっている。
んで次!「惑星メカニロボット」というシリーズがあって、その中にマースというロボットがいた。
スタッフの二見信洋さんとドットマトリクスのLEDを使ったユニットを考えたとき、このマースの顔を思い出してどこかこのテイストが生かせないかと試行錯誤して作ったのが、ドットマトリクスによる打ち込み型8チャンネルのゲートシーケンサー「TACHO 8(たこはち)」だった。
シルバーのボディーに原色のボタンを配置、何となくマーズの影響が見てとれ…ないか?無理がある?(笑)でも自分としてはかなり満足しているのよ(笑)。
ちなみにマースには廉価版のシリーズもある。共通のモチーフを持たせつつバリエーションを作るという点にも凄く影響を受けている。
というわけで、現在はアオシマのプラモはほとんど手元にないが、「アウトサイダー…」を読みながら記憶を掘り起こし、デザインだけでなくワクワクの心意気も込めながら、今後も自作楽器の開発に励みたいと思っている。
最後に、「アウトサイダー…」の続編や何かイベントがあれば「俺だけのマシン」というテーマで、アオシマのいろいろなプラモデルから好きな部品を組み合わせた摩訶不思議なマシンたちをたくさん見たいな。「創造のプラモデル」というアオシマの崇高な理念を受け継いでいるのか、はたまた根本的に勘違いしたのか、そんなステキな作品たちを(笑)。
それから超物凄く間接的ではあるが、私がこの本に協力していることが判明、いつかブログでお伝えできればと思っている。
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